「あんなに長い時間要らないのに」
「それは君だから」
「いっそ全教科一度にもってきてくれたほうが助かるよ」
「受験生に殺されそうだ」
「それは嫌だね」
「それでね、聞いていいのかどうかわからないけど」
「うん?」
「志望校、どうする気なんだい?」
「・・・あー、」



どうして認められないんだろう。
そんな目で見て欲しくはないのに。
ちゃんと未来だって見えてるよ。
もう子供じゃないんだから。


「どうしようかな」
「あの、まだうちを受けようと思ってる?」
「でも、双識君は嫌なんだろう?」
「それは、折角才能を持ってるのにって思うから。
 俺のことで、縛りたくはないし」
「縛りだなんて思わないよ。俺が好きでしたいことだから」
「でもやっぱり、反対」
「ふーん」



つまらなそうな顔をしないでよ。
もっと先を見て欲しいだけなのに。
もっと向こうの未来まで。
やっぱり、まだ子供なんだろうな。


「医学部に受からないと認められないってあの話」
「母親は、好きにしろっていってるよ」
「だけれどお父さんは」
「俺が役に立つ人間に育てばいいとしか思ってないよ」
「じゃあ、将来どうするのさ」
「・・・君、学校の教師みたいだ」
「この前までそうだったからね」
「教育実習じゃないか」
「それでも先生と呼ばれたよ」
「双識先生、かぁ」



きっと、
夢のあるこの人に甘えたいだけ。
自分のことをうやむやにしたいだけ。
将来だってどうせろくなことはないよ。
ただ、 彼がいてくれればそれでいい。


「何でもできるっていうのも考え物だね」
「日本史、苦手だったくせによく言うよ」
「だってあんな過去の話面白くないじゃないか」
「じゃあなんで授業に出たんだよ」
「そんなの、」
「そんなの?」
「君がいたから」
「可愛いね」
「年上ぶらないでくれよ」
「いいんだよ、年上だから」



きっと彼はすぐに一人で歩き出す。
自分の手なんかじゃ、
絶対に届かないようなところへ。
それはきっといいことで、
喜ぶべきことだけれど。
怖くなってしまう夜があるのが現実。


「双識君の学校は駄目」
「とういうか、・・・うん、駄目」
「でも俺は君のそばにいたい」
「それは俺も、そうだけど」
「うーん」
「君に希望はないし」
「別にどこでもいいんだよ」
「じゃあさ、うちの近くの学校、受けてみる?」
「近くって、あの学校?」
「そう、日本一の」
「いいかもね」
「・・・・嘘、本気にしたのかい?」
「だってすぐ会いにいけるし、ご飯だって一緒に食べられるよ、きっと」
「受かる自信、あるの?」
「二次に向けて今から対策立てれば大丈夫だと思うよ」
「うわぁ、後ろから刺してやりたい」
「俺が受かったら、嬉しい?」
「そりゃあ、まぁ」
「どのくらいさ」
「・・・俺の部屋の合鍵渡して一緒に暮らそうか、なんていっちゃうくらいには」
「相当だね」
「うるさいなぁ」
「じゃあ、俺、頑張るよ」
「無理はするなよ」
「うん、ありがとう」







永遠なんて信じていないけれど