「おはよう」
「・・・・オハヨウゴザイマス」


寝ぼけ眼のマイハニー。眉間のしわがとってもキュート。


「よく眠れたかい?」
「どのつらさげてんなことぬかしてんだよこの色欲魔人」
「テヘ、おじさんたらがんばりすぎちゃったかな!」
「死に晒せ」


東京タワーのてっぺんから日本海溝のどん底まで級のテンションの違いに俺はびっくり。
でもかすれた声はすごくセクシーだよ双識君。
ちょうど淹れた熱々のコーヒーを差し出すと、ぎろりとこちらに視線をよこす。
やだなぁそんな熱い視線を送らないでよ、困っちゃう。
その視線の強さといったら、まるで人を殺せそうなくらいなんだよ。え?実際殺す気なんじゃないかって?大丈夫大丈夫、だって俺たちは愛し合っているから!


「ね!双識君!」


痛い!痛い!無言で殴らないでよ!コーヒーがこぼれてしまうじゃないか!なんかうざい、って、双識君、君はいつからそんなにひどい子になってしまったんだい!昨夜はあんなに可愛かったの


「零崎をはじめ」
「わーわーわー!ちょっと、朝から物騒すぎるよ!」
「今、妙なこと考えただろ」
「え、そんなことないよ」
「あんたは嘘吐きだから信じない」
「そんな!人を疑ってはいけないよ!信じるものは救われるんだよ!」
「・・・ふーん。じゃ、お詫びに朝ごはん作ってあげますよ」
「本当かい?やぁ、嬉しいなぁ」


台所に消えていく双識君の背を見送りながら、あぁ、やっぱり俺は愛されているんだなぁと幸せな気持ちで一杯になる。食事の完成を心待ちにしながら、散々な状態にしてしまったシーツを洗濯機に放り込む。テーブルに戻るとそこには香ばしく焼けたトーストと淹れなおされたコーヒー。なんとなく卵の匂いもするから、きっと目玉焼きか何かを焼いているんだろう。
なんて思っていると、双識君が皿を運んできた。まっさらな皿の上には黄色いぷりぷりでふわふわのスクランブルエッグ。さすが双識君、カレーはてんで駄目だけど、それ以外の料理は結構上手だね!


「垓輔さんへの気持ちをたっぷりそそいだんです。大事に食べてくださいね」
「双識君・・・・・!!!」


エプロンのすそをもじもじいじりながら照れた顔を見せる彼が愛おしくてたまらない。これは気持ちにこたえなければ!そう俺はフォークを持つ、そしてスクランブルエッグへ手をすすめ、

そこでとめた。


「どうしたんですか?」
「・・・双識君」
「はい?」
「この前の買出しっていつだっけ」
「ええと、結構前かな」
「この卵、そのとき買ってきたんだよね」
「そうですよ」
「やばいんじゃないの、これ」
「何が?」
「いや、だから、・・・いたんでるんじゃないかな、なんて」
「大丈夫ですよ!ちゃんと火も通しましたし、そんな一週間や二週間」
「それは問題だよ!あぁ大問題さ!」
「そんな、私のこと信じてくれないんですか・・・っ」
「や、そういう問題じゃなくて・・・」
「垓輔さんもいったじゃないですか、信じるものは救われる、って」
「え、え、え、え、えぇー!」
「残さず食べてくださいね。私を信じているのなら」


兎吊木家の食卓には、可愛い可愛いマイラバー。



そして、きいろいあいつが笑う。








スクランブルエッグザモンスターズ